Song of Life 「償い」 さだ まさし

2001年、東京・世田谷の三軒茶屋駅で、男性が暴行を受けて亡くなった事件で、加害者の少年2人に実刑判決が言い渡されました。裁判長はさだまさしさんの歌「償い」を引き合いに出し、2人に心からの反省を求めました。「償い」は、交通事故で相手を死なせてしまった若者が、遺族に仕送りを続けるという内容で、実話が元になっています。裁判長は「この歌の、せめて歌詞だけでも読めば、なぜ君らの反省の弁が人の心を打たないか分かるだろう」と諭しました。

「償い」
作詞 作曲 さだまさし

月末になると、ゆうちゃんは薄い月給袋の封も切らずに
必ず横町の角にある郵便局へ飛び込んで行くのだった
仲間はそんな彼を見てみんな貯金が趣味のしみったれた奴だと
飲んだ勢いで嘲笑っても、ゆうちゃんはにこにこ笑うばかり。

僕だけが知っているのだ、彼はここに来る前に一度だけ
たった一度だけ悲しい過ちを犯してしまったのだ
配達帰りの雨の夜 横断歩道の人影に
ブレーキが間に合わなかった 彼はその日とても疲れてた

ひとごろしあんたを許さないと 彼をののしった
被害者の奥さんの涙の足元で
彼はひたすら大声で泣きながら
ただ頭を床にこすりつけるだけだった

それから彼は人が変わった なにもかも
忘れて 働いて 働いて
償いきれるはずもないが、せめてもと
毎月あの人に仕送りをしている

今日ゆうちゃんが僕の部屋へ 泣きながら走り込んで来た
しゃくりあげ乍ら 彼は一通の手紙を抱きしめていた
それは事件から数えてようやく7年目に始めて
あの奥さんからはじめて彼宛に届いた便り

「ありがとう あなたの優しい気持ちは とてもよく分かりました
だから どうぞ送金はやめて下さいあなたの文字を見る度に
主人を思い出して辛いのです あなたの気持ちは分かるけど
それよりどうかもう、あなたご自身の人生をもとにもどしてあげてほしい」

手紙の中身はどうでもよかった それよりも
償いきれるはずもない あの人から
返事が来たのが ありがたくて ありがたくて
ありがたくて ありがたくて ありがたくて

神様って 思わず僕は叫んでいた
彼は許されたと思って良いのですか
来月も郵便局へ通うはずの
やさしい人を許してくれて ありがとう

人間って哀しいね だってみんなやさしい
それが傷つけあって かばいあって
なんだかもらい泣きの涙が とまらなくて
とまらくて とまらなくて とまらなくて


人には誰にも思い出したくない、知られたくない、暗い罪の思い出がある。
償いたくともその術のない罪がある。いっぱいある。

この「償い」の主人公は、まだ、償う行為が継続出来るだけ幸いであろう。

心ならずも傷つけてしまったあの若い頃の友は今どうしているだろう。
この世に反抗して暗い世界に落ちて行く友をとどめる事をやめてしまった自分の罪をどうやって償う。
その気持ちを知りながら、無視した罪はどうして償うのか。

今は亡き母に犯した無情の罪はどう償えば許されようか。
エス様は、過去の、現在の、またこれから犯すであろう未来の罪をも許して下さるために十字架について下さった。
その赦しが、あの人やこの人に、伝えられればよいのに、と祈るだけ。

 さだまさしのこの償いの歌が無性に心に浸みる。
「SONG of LIFE」というCDに入っている。しばらくこのさだまさしという歌手にはまりそうだ。