聖書とメトロノーム
音の芸術の世界は一見、奔放そのもののようでありながら、実はその基礎は正しい速度を規準するメトロノームによって支配されております。
しかし演奏にさいして、音の速度がなぜそう重要視されねばならないのでしょうか。 それは音の速度は、人間のからだでいうなら、全機能の運転の中枢をなす心臓の鼓動のように、その個々の曲のテーマの脈はくにほかならないからです。
しかしメトロノームが必要なのは、単に音の芸術の世界ばかりではありません。あらゆる芸術的、否、あらゆる創造的世界には、その基底にメトロノームが必要です。歴史の流れの中に立つ人間一人一人も、広い意味では、創造的世界の一形成点であると言えます。